車が故障して動かなくなったとき、「家族や知人の車で引っ張ってもらえるだろうか」と考えるかもしれません。
故障車をロープなどで牽引する場合、牽引免許は不要とされています。ただし、車を運転するための免許や、速度・牽引方法の条件は守る必要があります。
また、車種や故障の状態によっては、ロープで引くことで損傷が広がるおそれもあります。まずは加入している自動車保険のロードサービスやJAFに相談し、適切な搬送方法を確認しましょう。
この記事では、一般の乗用車で故障車をロープ牽引する場合を中心に、免許・速度・ロープの条件と注意点を整理します。
故障車の牽引に牽引免許は必要?
故障車をロープなどで牽引するときは例外がある
警察庁の「交通の方法に関する教則」では、故障車をロープやクレーンなどで牽引するときは、牽引免許が不要とされています。
ただし、これは故障車の牽引についての例外です。キャンピングトレーラーなどを牽引する場合と、同じ条件で考えないようにしましょう。
また、牽引免許が不要でも、どの車でも安全に引っ張れるわけではありません。牽引する車と故障車の双方について、取扱説明書や故障の状態を確認する必要があります。
出典:警察庁「交通の方法に関する教則」第4章第2節(PDF)
牽引する側にも、故障車を操作する側にも運転資格が必要
牽引する車を運転する人には、その車を運転できる免許が必要です。普通免許で運転できる車の範囲や、AT限定などの条件も守らなければなりません。
ロープで車輪を接地させたまま牽引する場合は、故障車側にも、その車を運転できる資格を持つ人が乗り、ハンドルやブレーキなどを操作する必要があります。
牽引免許が不要というだけで、無免許の人が故障車を操作したり、無人の車をロープで引っ張ったりできるわけではありません。
故障車を牽引するときの速度は何km/h?
道路の区分と車両総重量によって異なる
一般の乗用車で故障車をロープ牽引する場合、法定最高速度は、道路の区分と車両総重量の条件によって異なります。
| 道路・牽引の条件 | 法定最高速度 |
|---|---|
| 道路交通法施行令第11条第2号に該当する一般道路 | 30km/h |
| 上記以外の道路で、故障車の車両総重量が2,000kg以下、かつ牽引する車の車両総重量がその3倍以上の場合 | 40km/h |
| 上記以外の道路で、40km/hとなる重量条件を満たさない場合 | 30km/h |
第11条第2号に該当するのは、中央線・車両通行帯や中央分離帯などがなく、同条第1号の区分に当てはまらない一般道路です。2026年9月1日から、こうした生活道路などの法定速度は30km/hになりました。
この区分の道路は、第12条の牽引時の速度特例から除かれています。そのため、重量条件を満たしていても、法定最高速度が40km/hになるわけではありません。
なお、重量条件に使うのは「車両総重量」です。車の見た目や「軽自動車だから軽いはず」といった推測で判断しないでください。
出典:道路交通法施行令第11条・第12条、警察庁「生活道路における自動車の法定速度」
道路の速度規制と、車の取扱説明書も確認する
表の数値は法定最高速度です。道路標識・標示による速度規制がある場合は、その規制も確認してください。
さらに、車の取扱説明書が、牽引時の速度や距離を制限していることがあります。法令上の条件だけでなく、車両側の指定も守る必要があります。
例えば、取扱説明書に「牽引時は30km/h以下」と指定されている車を、法令上の重量条件を満たすからといって40km/hで牽引することは避けてください。
最高速度は、その速度で走れば安全という意味ではありません。道路や車の状態に応じて、確実に操作できる速度まで落とす必要があります。
※上の表は速度の規定を整理したもので、各道路での牽引の可否や、車種ごとの牽引条件を示すものではありません。
ロープ・白い布・車間距離の条件
車輪を上げずに故障車を牽引するときの方法は、道路交通法施行令第25条第2号に定められています。
| 確認すること | 条件 |
|---|---|
| 車同士の接続 | 丈夫なロープなどで確実につなぐ |
| 故障車側の操作 | その車を運転できる資格を持つ人が乗り、ハンドルなどを操作する |
| 車と車の間の距離 | 5mを超えない |
| ロープの表示 | 見やすい箇所に30cm×30cm以上の白い布を付ける |
5m以内という条件は、牽引する車と故障車の間の距離です。市販ロープの長さだけで判断せず、取り付けた状態で確認する必要があります。
白い布の「30cm平方」は、30cm×30cmという意味です。「30平方センチメートル」や「0.3平方メートル」と取り違えないようにしましょう。
ロープを付ける場所やフックの取り付け方法は、車ごとの指定に従います。近くにある金属部分へ自己判断でロープを掛けることは避けてください。
AT・ハイブリッド・EV・4WDは車ごとの指定を確認する
ニュートラルにすれば牽引できるとは限らない
AT車・ハイブリッド車・EV・4WDなどは、車種や年式、駆動方式、故障箇所によって牽引の条件が異なります。
シフトをNにできるかだけでなく、車輪を地面に接した状態で運んでよいか、どの方向へ牽引できるか、速度や距離に制限があるかを確認する必要があります。
例えば、トヨタのRAV4 HEVの取扱説明書には、ロープ牽引時は30km/h以下とし、車両積載車までの移動など、できるだけ短距離にとどめる指定があります。また、装備や故障状態によって、ロープ牽引できない場合も示されています。
これはその車の指定です。「ハイブリッド車ならすべて同じ」「AT車なら何kmまで大丈夫」と一般化せず、自分の車に対応した取扱説明書を確認してください。
引っ張る側の車にも確認が必要
故障車だけでなく、牽引を頼む車についても、他車を引いてよいか確認が必要です。
牽引されるためのフックが付いていても、その車で別の車を引いてよいとは限りません。フックの使用目的や、他車の牽引に関する禁止事項も確認しましょう。
出典:トヨタ「RAV4 HEV 2025.12~ けん引について」
自分たちで牽引せず、ロードサービスに相談したいケース
次のような場合は、ロープをつないで動かす前に、販売店やロードサービスへ状況を伝えてください。
- ハンドルやブレーキを確実に操作できない
- 車輪が動かない、シフトやパーキングブレーキを解除できない
- 駆動系の異常が疑われる、異音がする
- 取扱説明書で牽引できる条件を確認できない
- 長い下り坂や長距離の移動になる
車によっては、エンジンやハイブリッドシステムが停止すると、ハンドル操作が重くなったり、ブレーキの効き方が変わったりします。引っ張れば動きそうでも、安全に曲がり、止まれるとは限りません。
長い下り坂では、ブレーキの過熱も問題になります。車両の状態や移動経路に不安がある場合は、専門業者に運搬方法を判断してもらいましょう。
出典:トヨタ「けん引について」
高速道路では避難と救援要請を優先する
高速道路で故障した場合は、その場で知人によるロープ牽引を手配するよりも、後続車への合図、安全な場所への避難、通報・救援要請を優先してください。
車の周囲で作業したり、車内で待ち続けたりすると、後続車に追突される危険があります。現場の状況に応じて警察や道路管理者の指示に従い、ロードサービスに搬送を依頼しましょう。
故障直後の対応は、車が故障したらどうする?安全確保・連絡先・レッカーまでの対応を解説で整理しています。
出典:警察庁「高速道路」
牽引・搬送を依頼するときに伝えること
ロードサービスに連絡するときは、次の情報を整理しておくと、車の状態を説明しやすくなります。
- 現在地と、一般道・高速道路・駐車場などの場所
- 車種と、分かれば年式・駆動方式
- 動かなくなった経緯、警告灯、異音などの症状
- ハンドル・ブレーキ・車輪・シフトの状態
- 希望する搬送先
操作できるか分からない項目は、無理に試さず「未確認」と伝えてください。
依頼時には、搬送先が車を受け入れられるか、ロードサービスの対象範囲と追加費用も確認しましょう。修理先が決まっていない場合は、そのことも窓口に伝えて相談します。
故障車の牽引では、牽引免許が不要でも、運転資格・速度・ロープの条件や車種ごとの指定を守る必要があります。自分たちで安全に移動できるか判断がつかないときは、無理に動かさず、適切な方法で搬送してもらいましょう。